2016年2月29日月曜日

種籾を、お風呂みたいな機械で消毒

こちら南薩では、早くも米作りが始まりました。早期水稲といって、4月には田植えをするので2月から米作りが始まるんです。

私は、米農家である先輩農家Kさんに協力してもらいながら米作りをしており、箱苗はKさんに作ってもらっています。私が無農薬・無化学肥料でお米を作れるのも、Kさんの苗作りのお陰です。

というのは、稲の苗は普通、田植えの前に結構農薬を使っているんです。 まず、種籾を消毒するのに農薬を使います。そして、床土(培土)も消毒します。最後に、播種の際にも農薬をかけます。なにしろ、苗に病気が入って全滅してしまったら、田植え自体ができなくなりますから、病原菌を入れないように何回も消毒するんですね。

でも、Kさんの苗作りでは、この段階の農薬全てを使いません。床土は化学農薬ではなく熱で殺菌したものをわざわざ購入していますし、播種の際には 「タフブロック」という生物農薬を使っています。これは敢えて無害な菌を繁殖させることで雑菌を抑制するものです。

で、種籾の消毒はどうするかというと、お湯で消毒するんです。60℃のお湯に9分間キッカリ浸けて、熱殺菌するわけです。「温湯消毒」といいます(10分間のやり方もあります)。

そのために、写真のような専用の機械があって、 お湯の温度を0.1℃単位で調整してくれます。なにしろ、少しでも熱すぎると米が煮えて発芽しなくなりますし、ぬるすぎると殺菌になりません。米が煮えないギリギリのところで殺菌する、ある意味きわどい方法です。

ところで、この作業自体はさほど大変なものではありませんが、問題はこの大きな機械の置き場所だと思います。一年に一度、しかも1回しか使わないのにお風呂より大きな機械なので、倉庫にかなり余裕がないとこの機械を導入するのは躊躇うでしょう。その点、農薬を使うのは特別な機械はいりませんから、やっぱり楽です。多くの人が種籾の消毒に農薬を使うのはしょうがないことですね。

ということで、Kさんの無農薬の箱苗作りがあるから、私も無農薬・無化学肥料でお米が作れるわけです。

お米に限らず、無農薬栽培というのは、植えてしまえばそれほど難しいものではないと思いますが、無農薬で苗を作るのは結構手間がかかるんですよ。

2016年2月24日水曜日

タンカンの収穫はヒヨドリに完敗

やってしまいました……!

先日タンカンの収穫を始めたのですが、数日別の仕事の予定が入っていて、その間収穫ができなかったんです。そして、さて最後の収穫をするかと圃場に入ったところ、タンカンたちが大変なことに。

ほとんど(98%くらい!)ヒヨドリに食べられています。

そもそも私は樹上完熟してから収穫することにしているので、ヒヨドリに食べられるリスクは大きいんです。それにしてもこんなに食べられるのは想定外。たぶん10万円分くらい喰われてしまいました。私の経営規模だと10万円分の減収はかなり痛いです。ヒヨドリとの収穫競争に完敗してしまいました。

ところで、ヒヨドリは美味しい果実を集団で狙い撃ちするので、隣の畑のタンカンが全然食べられていないのに、こっちのタンカンは全滅しているなんてこともあります。つまり、ヒヨドリに根こそぎ食べられているというのは、その果実が美味しい証拠でもあります。そういう意味では味に自信が持てますが、でもほぼ全て食べられちゃっているから美味しかったかどうか検証のしようがありません!

たった5日くらいのことで、全滅しちゃうなんて、本当に農業には「魔」がいますね。

……「魔」じゃなくてヒヨドリですけど。

ちなみに、ここの圃場は、去年はあまりヒヨドリには食べられなかったところなので、正直油断していました。来年からは鳥害対策をやっていきたいと思います(といっても完全に防ぐのは難しいのですが)。

ヒヨドリに食べられなかった分(もちろんそっちの方が多いですよ)のタンカンはインターネットショップで販売中なのでどうぞごひいきに!

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【南薩の田舎暮らし】無農薬・無化学肥料のタンカン

2016年2月19日金曜日

タンカンの販売、もうすぐです!

2月17日、タンカンの収穫を始めました。

今年のタンカンは、着果数は昨年の半分程度しかなく不作ですが、味の方は割と品質がよく、特に樹高が高い数本は、最高のものができたと自負しています。

収穫時に糖度を測りましたら、14度〜15度ありました。これは、タンカンとしてかなり甘い方だと思いますし、ただ甘いだけでなく、酸味もしっかりあって濃い味がします。こういうのが毎年できたらいいですねー。

でも、樹高がまだ低い方のタンカンは、台風後に「かいよう病」というのがばーっと広がってしまったため若干品質が下です。「かいよう病」というのは、その名の通り皮(や葉っぱ)に胃潰瘍のような病変が広がってしまう病気で、軽度なら味にはさほど影響しませんが樹そのものが弱るため、全体としてみてやはり美味しさが低下してしまいます。

普通は台風後には薬剤散布をして「かいよう病」を防ぐのですが、無農薬で作っている以上、こういう被害はしょうがないのかなと思います。「にがり」を1000倍に薄めて撒布すると「かいよう病」が防げるという話もあるので、来年も台風直撃があれば試してみたい気もしますけど、私は農薬として登録が取れているもの以外を撒布するのには少し抵抗があるんですよね…。

ところで、タンカンは昨年は1キロあたり300円を基本とした料金設定をしておりましたが、今年から50円値上げさせていただきます。本当はお安くしたいのですが、300円だと手間に折り合わない部分が出てきたので、今年から350円/キロ、来年以降には400円/キロにしていくことを考えています。でも、これでも無農薬のタンカンとしてはものすごく安い方なんですよね! まあ他の方と比べても仕方ないんですけど。

というわけで、若干値上げしますが今年もよろしくお願いします!(ネット販売は数日後からスタートします)

【2/21追記】
タンカンの販売開始しました! お買い求めはこちらから↓
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2016年2月15日月曜日

防風林の管理も農業の大切な仕事

昨年末、赤生木ポンカン園のヒトツバ(イヌマキ)を大胆に剪定しました。

ここら辺の果樹園では、防風林としてほとんどこのヒトツバが植えられています。

一昨年から借り受けたこの園地もヒトツバの立派な防風林がありました。が、立派すぎて園地が薄暗い。

ヒトツバってとても生長が早いので、2〜3年剪定しなかっただけですごく大きくなってしまうんです。前にこの園地を借りられていた方は、あまり頻繁に剪定する方ではなかったようですっかりやんかぶっていました(※「やんかぶる」鹿児島の土地言葉で「ボウボウになる」の意)。

それで、一気に2メートル近くちょん切ってみました! 愛機ハスクバーナ445(チェンソー)が大活躍!

ここはこのヒトツバのせいで夏でも薄暗くて、あまり草が生えないようなところだったのですが、これで日当たりはバッチリになるはずです。秋から冬にかけて日照が減るのが品質に悪い影響があるような気がしていましたので、来季のポンカンの品質向上が期待できます。

農業の仕事というと、作物の世話というイメージがあると思いますが、防風林の管理みたいな地味な仕事も多いです。でもこういう圃場整備(作物を育てる場を管理・造成する仕事)は農業の最も重要な仕事だと思います。作業しやすく、作物が健全に育つような「場」を準備することが収穫の第一歩ですね!

2016年2月12日金曜日

無農薬・無化学肥料のしらぬい、販売開始!

2月8日、「しらぬい」を収穫しました!

しかし、豊作だった去年と比べると3割くらいの量しかありません。普通の製造業で、投資が同じなのに製品が3割しかできなかったら責任者はクビだと思いますが、こういうことがよく起こるのが農業の面白い(!?)ところです。

昨年は、春先の低温で着果もイマイチでしたし、それからの長雨、そして台風直撃と柑橘には相当過酷な年でした。ほとんど落果してしまったという圃場もあるそうですから、3割も収穫できたことに感謝しなくてはならないのかもしれません。うちの圃場でも台風で10本以上倒れ、うち4本くらいは枯れてしまいましたので、今年の果実は生き残った貴重な存在です。

ところで、しらぬいは収穫1ヶ月くらい前から、写真のように白い布でできた袋みたいなものを被せます。これ、「サンテ」と言います。霜よけとか着色促進とかいろいろ効果がいわれていますが、最大の目的は鳥に食べられないようにすることです。

しかし最近は鳥の方も慣れてきたのか、サンテを剥がす技を覚えているものがいるようですね。被せているのに結構ついばんでいます。果物生産は本当に鳥との知恵比べですねー。

というわけで、しらぬいのご注文受付を開始しますので今年もよろしくお願いいたします。

なお、昨年は4kgで2000円でしたが、4kgだとダンボールにちょっと隙間ができるので、今年は4.5kgで2250円(キロ単価は同じ)に設定してみました。 一見値上げみたいですが値上げはしていませんのでご理解下さい!

→ご注文はこちらから
【南薩の田舎暮らし】無農薬・無化学肥料のしらぬい(約4.5kg)

2016年2月8日月曜日

「今までで一番おいしい柑橘」

ネットショップでのポンカンの販売を終了させていただきました。

ポンカン自体はまだまだ20ケース以上在庫があるのですが、1月末に収穫したものは品質のバラツキが大きく、配送するものにイマイチな果実が混じってしまう可能性が大きいので、残りは地元の物産館「大浦ふるさと くじら館」でやや安値にて販売することといたしました。

ポンカンを買って下さったみなさん、改めてありがとうございました!

というわけで、今さらポンカンの宣伝をしてもしょうがないのですが、お客さんからとても嬉しいメールをいただいたので紹介させて下さい!

ポンカンは甘みが濃くて、コクがあって酸味と甘みのバランスのよい、
本当においしいポンカンでした。
普段ポンカンは種があるので、敬遠しがちだったのですが、(ずぼらですみません)
こんなにおいしいと種もまったく気になりません。濃厚な甘さでした。
自然農法や無肥料のお野菜や果物は味がいいので普段から購入しているのですが、今までで一番おいしい柑橘でした。

タンカンやしらぬいなど、いろんな柑橘を作られているんですね。
届けてくださったポンカンは、おいしさのあまり、もう半分ほどになりました。
またよろしくお願いいたします!
いやー、嬉しいですね! 「今までで一番おいしい柑橘」なんて言葉は生産者冥利に尽きます! しかもこのお客さんは、google検索で「南薩の田舎暮らし」を見つけて注文してくれた人なんですよ。何の義理も面識もないのにこんな丁寧なメールをわざわざ送ってくれるなんてそれだけで感涙ものです。

来年もまたご縁をいただけるように、一年間ポンカン栽培に精進していきたいと思います。

2016年2月5日金曜日

毟る剪定——柑橘栽培の12ヶ月

数日前、やっとポンカンの収穫が終わり、剪定作業に入っています。

ところで、早いもので農業を始めてから5年目に入り、だんだん柑橘栽培もやり方が分かってきました(遅い?)。まだどうしたら美味しくなるのか、というようなことは分かりませんが、とにかく収穫できる果実を生産できるようになったところです。

というわけで、柑橘栽培がどんなものかをみなさんにほんの少しお伝えすべく、1年間の作業を大体1ヶ月ごとにブログで書いてみることにしました。名付けて「柑橘栽培の12ヶ月」。NHK出版が出してるテキストみたいですね。

で、第1回の今回は、2月の剪定作業です。1月から始めるといきなり収穫ですから2月からスタートです。

さて、上の写真で、地面にモサモサと転がっているのが、私が剪定した枝葉です。プロの方が見たら「あんまり大きな剪定クズがないな」と思うかもしれませんね。私は剪定を細かい単位でやりますので、大きな枝をバッサリというのはあまりしません。

というか、ほぼ剪定バサミも使いません。

ではどうするか、というと、実は手で毟(むし)っています!

枝をエイヤァーと折り取るわけです。すると剪定跡は左の写真のようになります。

かなり大きな傷口ができます。

一般的な果樹栽培の指導書には、鋭利な刃物(ハサミかノコギリ)で切断面が最小になるように切りなさいというのが書いてあります。私も以前はそうしていました。

でもこのようにする方が実は合理的で、樹にとって負担が少ないのです。事実、傷口の癒合も早い!

ニンジンくらいの太さの枝も手の力だけで折り取ります。けっこう力がいりますが、慣れてくると割と楽にできるんですよ。

ここでこの「毟る剪定」がなぜ合理的なのかは説明しませんが(いずれ南薩日乗の方に書くかもしれません)、この剪定方法に変えてから無農薬でも虫害がかなり減ったように思います。しかも! ハサミ使うよりも作業が早く済むんですよね。あと5日くらいで剪定を終わらせますよ〜。

2016年2月1日月曜日

2月5日のレトロフト金曜市で「たんかんのオランジェット」を販売します

突然ですが告知です。

2月5日(金)、レトロフト金曜市に出店します! 名山町での出張販売です。

今回、メインの商品は「たんかんのオランジェット」です。

【参考】3月21日、Favori*マルシェで新商品「たんかんのオランジェット」を販売します! ←オランジェットって何? という方はこちらの記事をご覧ください。


オランジェット、美味しいですよねー。でも高い! なかなか気軽に食べられるお菓子ではありません。

「南薩の田舎暮らし」でも1枚200円程度で販売する予定です。一流チョコ店と比べたらかなーり安いですが、やっぱり高いと感じるかもしれません。

しかし、実際手間がかかるようです。このお菓子は。

このところ、家内がオランジェットづくりに勤しんでいます。タンカンのアク抜きをするだけで2〜3日かかるみたいですし、煮詰める作業もちょっとずつ糖度を上げていくので、タンカンのシロップ煮ができるまで5日くらいかかるようです。1枚のオランジェットをつくるのに1週間もかかっています。

しかも時間がかかるだけでなくて、繊細でもあり、油断していると失敗してしまうのだとか。家内は精神をすり減らしながら作業しております(笑)

しかしそのお陰で、シロップ煮にして乾燥させたタンカンはそれだけでもの凄く美味しいですよ!

こんな感じです!

いわゆるキャンディード・オレンジですね。タンカンの皮はそのままだと苦くてマズいですが、数日かけてアクが丁寧に抜いてあるので雑味がなく、食べ応えもあります。

これだけでも美味しいこのタンカンに、チョコレートを掛けてオランジェットが完成です。チョコマニアの家内にはチョコにもこだわりがあるらしいですよ(チョコはベルギー産を使用!)。

ちなみにタンカンはもちろん自家農園のもの。よく考えたらタンカンづくりは1年かかってるわけで、このオランジェットの製造日数は1年と1週間かもしれません!

そしてこのタンカン、言うまでもなく無農薬・無化学肥料です。

こういう、皮まで食べるレシピの場合は、やっぱり無農薬がいいですよね。柑橘類の場合は、農薬の安全基準は皮を剝いて食べることが前提になって定められていますから。

ちなみにタンカンそのもののご注文受付は2月中旬頃になりそうです。オランジェット用には少し早採りしたものを使いましたが、旬はこれからですね!

というわけで、南薩の田舎暮らしの「たんかんのオランジェット」をお楽しみに!