2017年7月4日火曜日

「完熟」のデメリット

完熟マンゴー、完熟トマト、完熟メロン…など、果物でも野菜でも「完熟」すると美味しいわけですが、生産者からすると「完熟」っていうのはなかなか難しいんです。

私が作っているブランド野菜「加世田のかぼちゃ」は完熟にこだわっていて、着果後60日以降の収穫が決められています。かぼちゃっていうのは、着果(花が咲くこと)後45日もすれば美味しく食べられて、50日で適熟といいますから、60日っていうのはかなり長いんですよ。

こうして、60日間も畑で熟成されたかぼちゃは確かに美味しいです。色合いもかなり濃くなりますし、文字通り「完熟」って感じです。

でも世間では完熟かぼちゃはほとんど出回っていません。みなさんが食べているかぼちゃは、着果後45〜50日程度で収穫したものがほとんどだと思います。

それはなぜか? というと、生産者的に、完熟させるデメリットが大きすぎる。

第1に、長く畑に置いておくわけなので、当然痛みも入りやすくなります。特に虫に食べられるリスクが大きいです。虫に食べられたところから腐り…というパターンですね。それから葉っぱもどんどんなくなるため、かぼちゃが日焼けするリスクも大きいです(日焼けすると商品価値がなくなります)

第2に、長く栽培するため、管理の手間も長くなる。農薬の撒布も回数が増えます。農薬はできれば使いたくないわけですけど、完熟まで生育させようと思うとどうしても農薬を使わざるを得ない。ちなみに、長く栽培するとそれだけ雑草も生えてくるので、畑の片付けをするのも大変になります。

第3に、完熟すると、写真のようにボチボチが出てきてしまう。このボチボチは、ハウスものではほぼ出ないんですが実は病気でも虫害でもありません(実は原因不明)。でもこれは完熟したサインのようなもので、完熟したやつにしか出てきません。そして食べても全く問題はありませんが外観が悪くなるので等級が落ちる! 当然単価が下がります。そんなわけで、かぼちゃは着果後45日くらいまではほぼ全てA品なんですが、着果後60日になるとA品率が20%くらいになります。

となると、わざわざ完熟させてから出荷するより、着果後45日で収穫した方が単価がよく、収入が多くなるわけです。これじゃあ誰もわざわざ完熟させませんよね?

さらに、完熟させることには、流通・小売業者的にもデメリットがあります。

それは、棚持ちが悪くなること! 着果後45日で収穫すれば、かぼちゃは夏でも2ヶ月は持ちます。でも60日で収穫すると、1ヶ月くらいしか持ちませんし、本当に美味しいのは収穫後2週間くらいかもしれません。

さらにさらに、実は完熟させることには、消費者にもデメリットがあるんです。というのは、かぼちゃは普通の野菜と違って完熟すると硬くなるんです。軟らかくなるんじゃなくて。しかもかなり硬くなるんで、切るのに苦労するレベルです。

生産者、流通・小売業者、消費者にとって「完熟」にはデメリットがある。一方メリットは、「美味しい」ということだけ…。

ですから、完熟かぼちゃは市場でほとんど出回っていないわけです。私の実感としても、わざわざ完熟させてブランドかぼちゃとして出荷するより、着果後45日でごく普通のかぼちゃとして出荷した方が収入がいい気がするので、かぼちゃに関して市場は「完熟」をあまり評価しない、というのは間違いないです。

にも関わらず完熟にこだわった「加世田のかぼちゃ」。ある意味すごいですよね。数あるデメリットをものともせず(?)美味しさだけを追求してるわけですから。少なくとも我が道をいくかぼちゃであることは間違いないです!


↓予約販売のみ。としておりましたが、在庫が5つだけ出ましたのでもしご注文される方はこちらから。
南薩かぼちゃ(1玉約2kg)【2017夏予約販売】

0 件のコメント:

コメントを投稿